今日は、ふとしたきっかけで手に取った一冊の小説と、それを通じて出会った俳優・鈴鹿央士さんについて、ゆるっと書いてみたいと思います。タイトルは「花まんま」。そう、あの直木賞作家・朱川湊人さんの作品です。そしてこの「花まんま」が、NHKでドラマ化されていたこと、しかも主演が鈴鹿央士さんだったことを最近知って、「あ、これは語りたい…」となりました。
そもそも「花まんま」ってどんな小説?
朱川湊人さんといえば、昭和の情緒を感じさせる独特の世界観と、ほんのり不思議なエッセンスを混ぜ込んだ物語で知られている作家さん。「花まんま」もまさにそんな作品で、戦後間もない大阪の下町を舞台に、ある少年の目を通して見た“ちょっと不思議で切ない”日々が描かれています。
タイトルの「花まんま」というのは、炊き込みご飯のこと。家庭ごとに味が違って、香りも違って、なんだか“昭和”って感じがする。これを聞いただけで、私はもう一気に郷愁に駆られたんですよね。まだ読んでいない人には、ぜひ手に取ってほしいです。短編集の一編なのですが、どの話もじんわり胸に沁みます。
鈴鹿央士さんが演じる「ぼく」
さて、この「花まんま」が2022年にNHKでドラマ化されたと知って、主演が鈴鹿央士さんだと聞いて、ちょっと驚きました。
鈴鹿央士さん、最初に知ったのは映画『蜜蜂と遠雷』でした。柔らかい存在感と、でも芯の強さを感じさせる演技が印象的で、「この人、どこかでまた見たいな」と思っていたんです。そんな彼が、「花まんま」で少年・博の役を演じたと聞いて、「ああ、これは絶対に合うやつだ…」と納得しました。
実際にドラマを見てみると、もうぴったり。戦後の混乱のなかでも、どこか素朴で温かさを忘れない少年の目線。鈴鹿さんの、静かだけど存在感のある演技がとても効いている。セリフが少なくても、目線や所作だけで感情が伝わってくるあの感じ。彼の透明感が、「花まんま」の世界観とものすごくマッチしていました。
鈴鹿央士という俳優の魅力
鈴鹿央士さんって、もともと俳優志望ではなく、スカウトのきっかけが女優・広瀬すずさんだったというエピソードがあるんですよね。高校生のとき、映画のエキストラとして現場にいた彼を見た広瀬さんが「すごく雰囲気のある子がいる」と推薦したんだとか。
そのエピソードを知って以来、ずっと気になっていた存在だったのですが、「花まんま」で完全に心を持っていかれました。彼の演技って、なんというか“間”がうまいんですよね。押し出しの強いタイプではないけれど、その場にいるだけで物語に深みが増す。声のトーンも落ち着いていて、ナレーションなんかもすごく合いそうだなと思いました。
小説とドラマ、どっちが良かった?
個人的には、小説の持つ“余白”がとても好きです。朱川湊人さんの文章って、全部説明しないんですよね。でもその「描かれていない部分」を読む側が想像できる余地があって、そこがいい。でもドラマになると、やっぱりビジュアルが与えてくれる情報量が多くて、また別の味わい方ができるんですよ。
たとえば、登場人物の服装や街並み、当時の空気感。そういうのは映像の力があるからこそ伝わるもの。だからこそ、どちらも違ってよかったなって思います。あ、小説を読んでからドラマを見ると、「あのシーンってこういう風になるのか〜」という驚きもあって楽しかったです。
なんだか“生きる力”をもらえた
「花まんま」の物語は、大きな事件が起きるわけではありません。だけど、日々の中にある小さな喜びや、切ない別れ、そして“人の温もり”が、そっと心に触れてきます。
現代って、情報も早いし、日々の生活に追われていると、大事なことを見失いがちですよね。そんなときにこの小説やドラマに出会うと、「ああ、生きてるだけで、誰かと関わって、時々泣いて笑って、それでいいんだな」と思える。そういう優しさが、この作品には詰まっている気がしました。
そしてその世界を、鈴鹿央士さんという俳優が、静かに丁寧に演じてくれたことが、本当に良かったなと。
最後に
このブログを読んで、「花まんま」に興味を持ってくれる人がいたら、すごく嬉しいです。そして鈴鹿央士さんのことも、もっともっと多くの人に知ってほしい。きっとこれからも、いい作品に出てくれる俳優さんだと思います。
読書の秋じゃなくても、本とドラマの両方から“何か”を感じられるって、贅沢だなぁ。そんなことを思いながら、今日は花まんま風の炊き込みご飯でも作ってみようかな。